東京にお住いの方の相続税と遺留分に関して

相続問題において「遺留分」は、遺言書や贈与が争いの原因となる場合にしばしば重要な役割を果たします。特に親子関係や家族内のトラブルが深刻化した際、遺留分問題が裁判所での争いに発展することも珍しくありません。この解説では、遺留分の基本的な概念、計算方法、そして事例を交えながら解説します。

 

遺留分とは？

遺留分とは、法定相続人が最低限受け取る権利を保証するための制度です。被相続人（亡くなった方）が全財産を特定の相続人や第三者に遺贈したり、生前贈与した場合でも、一定の法定相続人にその一部を請求する権利が認められています。

遺留分の目的は、相続人の生活を最低限保障することや、不平等な遺産分配による家族間の不和を防ぐことです。

 

遺留分の対象者

遺留分を請求できるのは、以下の法定相続人です：

1. 配偶者：必ず遺留分を持つ。
2. 子供：法定相続人として遺留分を持つ。
3. 直系尊属（親や祖父母）：子供がいない場合に遺留分を持つ。
4. 兄弟姉妹：遺留分はありません。

兄弟姉妹が法定相続人であっても遺留分は認められないため、注意が必要です。

 

遺留分の割合

遺留分の割合は、遺産の全体額に基づいて以下のように定められています：

• 直系尊属のみが相続人の場合：遺産の3分の1。
• それ以外の場合（配偶者や子供がいる場合）：遺産の2分の1。

たとえば、遺産が1億円の場合、遺留分は以下のように計算されます：

• 配偶者と子供が相続人：1億円 × 1/2 = 5000万円。
• 直系尊属のみが相続人：1億円 × 1/3 = 約3333万円。

 

遺留分侵害額の請求

遺留分が侵害された場合、相続人は「遺留分侵害額請求」という手続きを通じて自分の権利を主張できます。この請求により、遺産をもらいすぎた相続人や第三者に対して、遺留分相当額の金銭を請求することが可能です。

 

遺留分侵害額請求の手続き

1. 遺産総額の算定
   遺産には、以下のものが含まれます：
   • 相続開始時の財産（不動産や預金など）。
   • 被相続人が生前に行った特定の贈与（特に死亡の前10年以内の贈与が対象）。
2. 遺留分の計算
   前述の割合に基づき、遺留分の金額を算出します。
3. 請求先の特定
   遺留分を侵害した相続人や受贈者（贈与を受けた人）を特定します。
4. 請求書の送付
   内容証明郵便などで、遺留分侵害額請求の通知を送ります。
5. 交渉または裁判
   話し合いで解決できない場合、家庭裁判所で調停や訴訟を行います。

 

遺留分問題の実例

事例1: 親が愛人に全財産を遺贈した場合
父親が愛人に遺産をすべて遺贈する遺言書を残した場合でも、配偶者や子供は遺留分を主張できます。遺留分侵害額請求を通じて、最低限の権利を確保することが可能です。

事例2: 子供の一人に生前贈与をした場合
被相続人が特定の子供に多額の生前贈与を行い、遺産分割時にその分が他の相続人より多くなる場合、他の相続人は遺留分を主張できます。

事例3: 孫に全財産を相続させた場合
遺言書で孫に全財産を相続させるとした場合でも、子供（孫の親）が遺留分を請求する権利を持ちます。

 

遺留分問題を回避するには？

遺留分問題を防ぐための方法として、以下が挙げられます：

1. 遺言書の作成
   公正証書遺言を活用し、相続人間での不公平感を和らげる内容を記載します。
2. 生前贈与の活用
   計画的な生前贈与を行い、遺産分割の際のトラブルを軽減します。
3. 専門家の相談
   弁護士や税理士に相談し、家族構成や資産状況に応じた最適な相続対策を立案します。

 

遺留分請求の期限

遺留分侵害額請求には時効があり、請求期限を過ぎると権利が消滅します：

• 相続開始を知った日から1年以内。
• 相続開始から10年以内。

 

遺留分問題に直面したら？

遺留分問題は感情的な対立を引き起こしやすいため、冷静な対応が重要です。特に争いが激化した場合は、早めに専門家のアドバイスを受けることで解決の糸口を見つけやすくなります。

 

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